葬祭業マーケティングの基礎知識

第1回|なぜ今、葬儀社にマーケティングが必要なのか

―「待ちの経営」から「選ばれる経営」へ―

「うちは昔から紹介で仕事が回っている」「広告を出さなくても、いざという時には電話が鳴る」。
多くの葬儀社経営者の方が、かつてはそう実感されていたのではないでしょうか。しかし近年、その前提が大きく揺らいでいます。

背景にあるのは、地域人口の減少、家族構成の変化、そして情報収集行動の変化です。以前であれば、近所や親戚からの紹介が当たり前だった葬儀社選びも、今では「地域名+家族葬」「費用」「口コミ」といったキーワードで検索され、複数社を比較したうえで決められる時代になりました。
つまり、何もしなくても選ばれる時代は終わり、「どう見られているか」「どう伝わっているか」が問われる時代に入っているのです。

ここで誤解されがちなのが、「マーケティング=広告・集客」という考え方です。マーケティングの本質は、派手な広告を打つことではありません。
自社は誰に、どんな価値を提供している葬儀社なのかを明確にし、それを必要な人に、適切な形で伝えること。これがマーケティングの基本です。

実際、施行品質が高く、真摯な対応をしているにもかかわらず、その良さが十分に伝わっていない葬儀社は少なくありません。「良いサービスをしていれば自然と伝わる」という考え方は、情報があふれる現代では通用しにくくなっています。

本シリーズでは、葬儀社経営に必要なマーケティングの考え方を、専門用語を極力使わず、現場目線でお伝えしていきます。
チラシやホームページ、事前相談や会員制度といった個別施策をバラバラに考えるのではなく、「選ばれる仕組み」としてどう組み立てるか。その全体像を理解していただくことが目的です。

マーケティングは、規模の大きな会社だけのものではありません。むしろ、地域密着で信頼を積み重ねてきた中小の葬儀社だからこそ、正しく取り組むことで大きな差を生みます。
次回は、葬儀社マーケティングの全体像を整理するための基本フレームについて解説していきます。

終活ビジネス部会 
リーダー 中小企業診断士 小泉悟志