《整体院の多店舗展開 と 施術者「張さん」》

私の住む東京の東のはずれの街でも、冬の寒さが到来しています。
みなさま、お変わりありませんか。

私は寒さが厳しくなるこの時期、仕事でストレスを感じると自然と肩が上がったまま
硬直した状態になり、肩こりや首の痛みが再発します。

以前、会社帰りの途中駅にある整体院(台湾式)に時々通っていたことがあります。
院長(経営者)の施術力はとても高く、価格も近隣他院より割安で満足感が高かったです。

院の施術者のスキルはバラつきがあるものの、院長が不在の時は、
院長の次にしなやかな手さばきの張さん(仮名)を指名していました。

数年前の初冬、院長を指名したいのに最近シフトに入っていないな、
と思いながらネット予約で張さんを指名しました。

いつもと変わらない雑居ビルの中層階。手続きや着替えを済ませ、
施術台で待っていると、張さんが足湯の道具を持って入ってきました。

張さん 「張です。よろしくお願いします!」

あれ、なんか雰囲気変わったな…。ですが私は人の顔や名前を覚えるのが非常に苦手なので、
しばらく施術を受けていなかったからかな、と思いながらも施術は始まりました。

しかし始まってすぐ、その手技のレベルで気づきました。

 「…あなた、張さんじゃないですよね」
張さん 「いえ、私の名前は張です!」
「いや、違うでしょ!」

張さん 「張です!」

施術経験が豊富とは言えないスキルレベルでした。そういえば日本語の会話もたどたどしい。

「施術歴8年の張さんですよ」
張さん 「はい、この経験8年です!」
「いやいや、あなたいつもの張さんじゃない!」
張さん(?) 「いえ、張です!8年です!!」

60分の施術が終わり、院の会計係が出したお茶を飲みながら事情を確認しました。

院の経営者が変わって、私の良く知る「神の手院長」は、
院の入り口に大きな顔写真が残ってはいたものの、もうこの院には来ないとのこと。

そして、私のお気に入りの「しなやか張さん」も院を辞めており、そのプロフィールを
まるまるそのまま引き継いだ別の「張さん」が、今回私の施術を担当しました。

「張さん」という名前だけは本当だったかもしれません。というか信じたい。
ですが、施術経験8年というのは最初の数十秒で偽りだとわかります。

毎年、初冬の頃に体が痛むと「張さん」のことを思い出します。

個人経営が多い整体業界ですが、今後サービスの差別化や経営の効率化で
優勝劣敗がより早く、より明確になり、多店舗展開する院も増加すると考えています。

その際、「居抜き」で経営が刷新される院もあることでしょう。
ですが、くれぐれも施術者のプロフィールまで「居抜き」しないことを願って止みません。

※院の名誉のために補足しますと、その後もこの院はサービス形態を変化・多様化させながら、
今でもその駅前で営業をしています。

エリアマーケティング研究会 整体部会 五十嵐