―「誰に向けた葬儀社か」を明確にする―
「うちは地域の皆さんに向けた葬儀社です」
この言葉は一見正しく聞こえますが、マーケティングの視点では、少し曖昧です。なぜなら、“誰に向けているのか”が曖昧なままでは、伝える内容も方法も定まらないからです。
葬儀社が陥りやすい勘違いのひとつが、「すべての人に向けた発信」をしようとしてしまうことです。
結果として、ホームページの文章は無難で当たり障りのない表現になり、チラシも価格やプラン説明だけが並び、「結局どんな葬儀社なのか分からない」という状態に陥ります。
ここで整理したいのが、喪主・家族・キーパーソンの違いです。
実際に意思決定をするのは誰でしょうか。
・手続きを進める喪主
・精神的な支えを求める配偶者や子ども
・冷静に比較検討する親族や後見人
この立場の違いによって、不安や知りたい情報は大きく異なります。
例えば、喪主は「何から始めればいいか」「失礼がないか」を気にします。一方で、子世代は「費用」「分かりやすさ」「後々の負担」を重視する傾向があります。
誰に向けて情報を出すのかを決めないまま発信すると、結果として誰にも深く刺さらない内容になってしまうのです。
次に考えたいのが、エリア特性・年代・家族構成です。
同じ家族葬でも、都市部と地方ではニーズが異なります。高齢単身世帯が多い地域と、子世代が主導する地域でも、求められるサポートは変わります。
「自社の商圏では、誰が中心になって相談してくるのか」を冷静に振り返ることが重要です。
ここで、簡単なターゲット設定ワークを紹介します。
① 最近の施行を3件思い出す
② 誰が主に判断していたかを書き出す
③ その人が一番不安に思っていたことは何か
④ それに対して、自社は何を提供できたか
この4つを書き出すだけでも、自社が向き合っている「本当のターゲット」が見えてきます。
ターゲットを決めることは、顧客を狭めることではありません。伝える軸を一本に絞ることで、むしろ安心感と信頼感が強まるのです。
次回は、「選ばれる理由は強みではなく違い」をテーマに、自社の価値をどう言語化するかを考えていきます。
葬祭業専門コンサルタント 中小企業診断士
株式会社エンディング総研 代表 小泉悟志

